鼠径ヘルニア
鼠径ヘルニア手術の麻酔
当院の麻酔方法
当院で行っている鼠径ヘルニアの手術の麻酔は軽い全身麻酔(静脈麻酔)と局所麻酔を組み合わせた『眠っているうちに手術が終わり、手術後の痛みの少ない麻酔』です。
日帰り手術では麻酔法が非常に重要と考えています。当院では手術後歩いて帰宅することができるよう、術中の身体への負担を少なく、術後の痛みを軽減できるよう工夫した麻酔を行っています。
局所麻酔について
局所麻酔は注射薬で、鎮痛目的で使用するものです。
局所麻酔薬は歯医者さんで歯茎に注射する麻酔と同じ種類のものです。鼠径部だけに部分的に効かせることができるので、歯の治療後にすぐに口を動かしてしゃべることができるのと同様手術後すぐに歩くことができますし、排尿・排泄も問題なくできます。
当院では、術中の鎮痛と術後の鎮痛の両方の目的で局所麻酔をします。手術中は麻酔で痛みを感じなくても目が覚めたら痛いのでは日帰りで帰ることは困難です。そのため、当院では術中にTLA麻酔と呼ばれる局所麻酔を使用し、通常よりも長く鎮痛効果が持続するように工夫しています。
局所麻酔の効果は手術後3~4時間ほど持続しますので、手術後ご自宅までは麻酔が効いた状態でご帰宅いただくことができます。
全身麻酔について
主に静脈麻酔薬を使用した全身麻酔です。静脈麻酔は点滴から入れる麻酔薬で、鎮静目的で使用します。
静脈麻酔薬は身体の中に入ると数十秒で意識消失します。そのまま持続し、手術終盤に薬を止めると数分で目が覚めます。呼吸は止まらず、手術中は眠っている状態です。ただ呼吸状態は覚醒時より少し落ちますので、マスクから酸素吸入もしています。
また、手術中の体動が大きい方などは、安全のために術中判断で麻酔を追加することがあります。その場合は点滴やマスクからの導入となります。
全身麻酔と聞くと「身体の負担が大きいのでは」「目が覚めなくなるのでは」と不安になる方もいるかもしれませんが、そのような心配はありません。静脈麻酔の中でも効きやすく覚めやすい薬で、日帰り手術には大変適した麻酔と考えています。 手術が終わる頃になると目が覚めるように薬を調整していますので、「もうすぐ終わりますよ」というお声がけの時には目が覚めています。覚醒直後は頭が重くぼんやりしていますが、徐々にスッキリしていきます。麻酔で眠っている間の記憶はないので、寝て起きたらもう手術が終わっているという感覚です。
入院手術の麻酔との違い
日帰りでも入院でも鼠径ヘルニアの手術の内容自体はほとんど同じで、異なるのが麻酔です。どんな麻酔を使うかで手術後の回復時間に大きく差が出ます。
入院手術の場合は、脊椎麻酔(背中から針を刺して行う下半身麻酔)や気道にチューブを入れるような深い全身麻酔で行うことが多く、身体の負担としては大きくなります。
また、手術後の飲食の制限があったり、麻酔の影響で尿が出にくくなることもあるので尿道にカテーテルを入れたりすることもあります。そうなると麻酔薬の影響がなくなるまでは元の生活には戻れませんので、入院管理が必要になります。
特に脊椎麻酔の場合は、手術後に頭痛がしたり、尿が出づらかったりで、手術の痛みよりも、そちらの方がつらかったという方がいらっしゃいます。しっかり麻酔をかけると手術はしやすいですが、患者さんの身体への負担は大きくなります。
鼠径ヘルニア手術はほとんどの場合それほど強い麻酔を使わなくとも手術はできますので、当院では必要最低限の麻酔になるよう工夫しています。
医師 髙島 格
私がかつて病院勤務していた時代は局所麻酔だけで手術を行っていました。しかし、局所麻酔だけでは意識があるので麻酔の注射の痛みもありますし、手術で引っ張られるのもわかります。手術中の緊張感、恐怖感を全く無くすことはできません。緊張していると、血圧は上がり、脈は速くなり、全身の筋肉に力が入ってしまい、身体の負担は大きくなります。そうなると手術もやりづらくなってしまいます。
そこで当院を開院してからは当初より静脈麻酔も使用し、眠っている状態のうちに手術を行っています。 この方が局所麻酔だけの手術より、心身の負担は少ないと考えています。実際、鼠径ヘルニアの手術を片側は病院で局所麻酔のみで受け、反対側を当院で静脈麻酔を併用して受けた患者さんに伺うと、全員が後者のほうが楽だったとおっしゃるので、現在の麻酔法で行っています。
この記事の監修者
医療法人社団オリビエ会
新宿外科クリニック
理事長 高島 格
1960年東京都生まれ。
東京医科歯科大学医学部卒業後、病院の外科で20年勤務し様々な手術を経験。
中でも得意としていた日帰り手術をより多くの人に受けてもらいたいと、2007年東京都新宿区に日帰り手術専門の新宿外科クリニックを開業する。
現在は、新宿外科クリニックと埼玉県さいたま市の大宮セントラルクリニックの2院を運営し、累計手術実績は下肢静脈瘤手術で約11000件以上、鼠径ヘルニアは8600件以上に及ぶ。
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