下肢静脈瘤
下肢静脈瘤の接着剤(グルー)治療が
健康保険適用になりました。
令和元年12月に保険収載された、現在一番新しい治療法が接着剤治療(通称グルー治療)です。
正式には下肢静脈瘤の血栓塞栓術といい、静脈内に医療用接着剤を注入して固めることで血液の逆流を止めるという治療法です。
手術のやり方は血管内焼灼術(レーザー、高周波)と同様、針を刺して血管の中にカテーテルを挿入して行うカテーテル治療ですので、傷跡は針穴のみです。
グルー治療は現在主流である血管内焼灼術と比較すると日本国内ではまだ症例は少ないですが、すでに数多く行われている欧米の成績では血管内焼灼術や抜去術と変わらない治療成績と言われています。今後は血管内焼灼術と並んでスタンダードとなっていくことが期待される手術法です。
グルー治療は症例によって向き不向きがあります。どういった治療法が望ましいかは診察時に医師からご説明しております。
当院では保険適用のメドトロニック社のVenaSealクロージャーシステムを採用しております。手術費用は健康保険3割負担の方でおおよそ50000円前後(片足につき)です。
グルー治療と血管内焼灼術の違い
接着剤治療の利点(血管内焼灼術と比べて)
- ①麻酔は針を刺す部分の局所麻酔のみ。大量の局所麻酔、静脈麻酔は不要。
- ②手術後の合併症である深部静脈血栓症や神経障害(しびれ)が少ない。
- ③手術後に弾性ストッキングを履かなくてよい。(手術前にむくみが無い方等)
血管内焼灼術とは違い熱で血管を焼灼しないので、術中の痛みがより少なく、そして熱による神経障害(しびれ)のリスクが減りました。それにより麻酔の量も格段に少なくすることができます。
さらに、グルー治療における最大の利点は術後の血栓症リスクが少ないことです。
血管内焼灼術では手術の特性上深部静脈血栓症のリスクを無くすことはできないため、手術後は定期的な超音波検査によるフォローアップと弾性ストッキングによる圧迫が必須です。これまでも下肢静脈瘤治療において弾性ストッキングの着用は不可欠なものでしたが、術後一定期間きつくて固い弾性ストッキングを履くのは辛いとおっしゃる患者様は少なくありません。
グルー治療では弾性ストッキングによる圧迫は不要ですので、弾性ストッキングがネックで治療に後ろ向きだった方にもチャンスができたことになります。
ただし、むくみが強い方などはやはり弾性ストッキングによる圧迫療法が必要です。その場合はグルー治療のメリットが少なくなりますので、血管内焼灼術による治療をおすすめしています。
接着剤治療の欠点(血管内焼灼術と比べて)
- ①接着剤に対するアレルギーが出る方がいる。(欧米では数%)
- ②コブが大きい方は、後日に硬化療法の必要がある。
グルー治療の場合、接着剤の成分であるシアノアクリレートにアレルギー反応を起こす可能性があります。シアノアクリレートは一般ではまつげエクステのグルーなどに使用されています。
アレルギーはアレルギー反応が出て初めてわかることが多く事前に予測することは難しいですが、体質的にアレルギーを起こしやすい方、様々なものにアレルギーがあるような方は高リスクといえます。
グルー治療でアレルギー反応を起こす割合は欧米の成績で数%ほどで、ほとんどは通常のアレルギー治療に準じた投薬治療で改善することが多いです。
また、血管の瘤が大きく気になる場合は個別に処置が必要です。どんな術式でも瘤が大きいとメインの静脈の治療だけでは瘤が残ってしまいます。血管内焼灼術であれば同時に瘤切除術などを追加で行うことが多いのですが、グルー治療の場合は瘤切除術は行いません。代わりに硬化療法という薬で静脈を固めて血栓化させる治療が選択されます。(手術とは別日に行います)
ただしグルー治療の数年後成績でみると残った瘤が縮んで目立たなくなるという報告がありますので、それほど気になっていない方や、すぐに見た目の改善を求めておられない方は瘤の治療はしないこともあります。
グルーで固めた血管はどうなるの?
静脈の組織自体は時間とともに体内に吸収されて消失しますが、グルーは人工物ですので吸収されず、固めた静脈に沿った形で線状に残ります。
治療対象の静脈は皮下脂肪の下にありますので、残ったグルーは見た目にはわかりません。押してみると少し触る程度です。しかし皮下脂肪が少なく、治療対象の静脈が皮下に見えているような脚の方ですと、固めたグルーが目立ってしまいます。そういった症例の場合は固めた静脈が消失する血管内焼灼術が良いと思われます。
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