鼠径ヘルニア
手術のリスク・合併症、再発について
手術によるリスク、術後合併症
鼠径ヘルニアの手術は体表の手術であり、数ある手術の中では比較的侵襲の少ない手術です。当院で行う日帰り手術は、さらに侵襲を少なくするため、手術創を小さくし、身体の負担が少なくなるよう工夫をしています。
低侵襲な手術を目指していますが、手術である以上は以下のようなリスク・合併症の可能性があります。
- 薬剤のアレルギー:術中薬剤、麻酔薬剤、術後内服薬(抗生物質や鎮痛剤など)による薬剤アレルギーが起こる可能性があります。事前にアレルギー歴が確認できた薬剤は代替薬に変更するなどして対応しております。
ただし、アレルギーは一度問題の無かった薬でも二回目にはアレルギー反応が出ることもあります。その場合は手術を中断、場合によっては中止しアレルギー対応を行います。 - 感染:感染とは、菌が入り化膿するということです。当院では感染に十分に留意して手術を行いますが、鼠径部小切開法・腹腔鏡手術どちらも切開を伴う手術になりますので感染の可能性は0ではありません。術後感染が確認できた場合も、軽度であれば抗生物質等の内服で軽快し問題の無いことが多いです。
当院では今まで例がありませんが、もし感染の範囲が広く、メッシュ感染を起こした場合はメッシュを取り除く手術を行う可能性もあります。 - 創部周囲の強い腫脹:鼠径へルニアの手術後は創部の周りからもともと膨らみがあった部分にかけて腫れます。これは治癒過程での正常な反応で、時間経過で引いていくものです。
まれに、この腫れが通常よりかなり大きく出る方がいらっしゃいます。手術前の鼠径ヘルニアの膨らみが大きかった場合には腫れも大きく出ることが予想できますが、中にはそれほど膨らみの大きくなかった方でも術後の腫れが大きく出ることがあります。腫れが大きいと引いていくまでに時間がかかりますが、多くの場合だんだんと引いていきますのでまずは様子をみます。
また、腫れと似た症状ですが、漿液腫ができることもあります。鼠径ヘルニアの手術後、もともと膨らみが出ていた部分のスペースに身体の水分が溜まることがあり、これを漿液腫といいます。漿液腫も時間経過で身体に吸収されて引いていくことが多いため経過をみますが、あまりに大きい場合には穿刺して水分を抜く処置をすることもあります。 - メッシュ使用による違和感:鼠径ヘルニア手術で使用するメッシュは手術後は身体の一部としてずっと残ることになります。
ほとんどの方はメッシュの存在を知覚されることはありませんが、まれに、「メッシュが当たって痛むような気がする」と違和感を訴えられる方もおられます。実際にメッシュが原因となっているかを診断することは難しく、違和感に対する有効な治療法はありません。
まずは様子を見ていただきますが、異物感や違和感はメッシュが身体に馴染んでいくとともに段々と薄れていくことが多いです。
再発について
手術を受けたのにまた膨らんできた、ということがあります。鼠径ヘルニアの再発です。メッシュを当てた部分以外の筋膜に穴が空いて、また腸が脱出することがあります。
手術では弱った筋膜部分を全て確認しながらメッシュ修復を行いますが、それでも手術時は問題の見られなかった部分が数ヶ月ほどして弱ってくることがあるのです。当院では手術を受けられた方全体の1%に再発がありました。
再発を防ぐには、まずは太らないこと、運動不足を防ぐことです。手術後は基本的には運動の制限はありません。
再発した場合は再び、穴が空いた部分にメッシュをあてるため手術を行う必要があります。
また、再発とは異なりますが、両側の鼠径ヘルニアが片側ずつ時間差で発症することがあります。 例えば初診でいらしたときには片側だけ鼠径ヘルニアがあり、手術後しばらくしたら反対側も鼠径ヘルニアになった、というような場合です。割合としては片側のみ発症する鼠径ヘルニアの症例の方が多いですが、両側鼠径ヘルニアになる方も少なくありません。その場合もまた手術が必要になります。
この記事の監修者
医療法人社団オリビエ会
新宿外科クリニック
理事長 高島 格
1960年東京都生まれ。
東京医科歯科大学医学部卒業後、病院の外科で20年勤務し様々な手術を経験。
中でも得意としていた日帰り手術をより多くの人に受けてもらいたいと、2007年東京都新宿区に日帰り手術専門の新宿外科クリニックを開業する。
現在は、新宿外科クリニックと埼玉県さいたま市の大宮セントラルクリニックの2院を運営し、累計手術実績は下肢静脈瘤手術で約11000件以上、鼠径ヘルニアは8600件以上に及ぶ。
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